キミの風を感じて
「加島くん」
廊下でも階段でも彼は注目の的で、そこらじゅうから飛んでくる熱い視線と黄色い声をまともに食らっていた。
「加島くん」
何度か呼んだけど周りの声援と同化して聞こえないのか、彼は大またの歩みをゆるめず、待ってなんかくれない。
とはいえ同じ教室に行くんだから、ちょこちょことあとをついていく。
しかしスゴイな。
金曜日に体育祭で注目を浴びて、休みの間にすぐあのニュースだもん。そりゃ人気者にもなるだろーけど。
「あの人だよね? 100のプリンスって」
「へー、結構イケてるじゃん」
とか……。
聞こえてるってば。
「加島くん」
教室まであと数メートルってところでやっと気づいたのか、彼が足を止めた。