キミの風を感じて

練習場所は加島くんが新記録を出してから、急にハンドボール部とチェンジしたんだよ。


たぶんマスコミ対策かな?


以前は金網越しに誰でも見物し放題だったけれど、グランドの奥ならコンクリートの塀に阻まれて、外部からの目も声もシャットアウトできるから。




そんなわけで今日の放課後も、わたしはユメちゃんと化学室の廊下の窓辺に並んで立っていた。


グランドでは加島くんがいつもどおり熱く筋トレを繰り返している。




「ほら、あの子たちまた来てるよ」


となりでユメちゃんがささやいた。




塀にピッタリ貼りつくように2、3人のグループが何組か、陸上部の練習を見守っている。

もちろん女子ばっかし。




「あれ全部加島くん目当てでしょ?」


「うん、たぶん……」


「なんで紗百は彼女なのにこんなとこで隠れて見てんのよ」


「別に隠れてるわけじゃないよ」




だけどあの子たちに混ざって、彼女づらして、練習中の加島くんに手を振ったりとか、ちょっとできない。


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