キミの風を感じて

くせ毛なのかいつも毛先がくるくるとあっちこっちに跳ねてるロングの髪は、今日は右肩のあたりでルーズに束ねられていた。


茶色がかった細くて柔らかな髪……。


人のことを真っ直ぐまともに見つめてくる大きな瞳はあの日のまま。


泣き出しそうな表情もあのときのままだった。




あの日――


去年の体育祭の障害物走で、ネットに引っかかって動けなくなったあの子を助けたのは、進行係を務めていた俺だ。




ネットに絡まったあの子の髪をはずしにかかったわけだけど、女の子の髪をさわるのなんて初めてだったし



その細くて柔らかな感触にも

やたら甘い香りにも

助けを求めて俺を見あげる大きな瞳にも



めちゃくちゃドキドキした。




ネットの中で2人きり、吐息を感じるほどの距離にいたから……。


< 24 / 375 >

この作品をシェア

pagetop