キミの風を感じて

ム、欲しいな……。


と思ったら、グッと差し出すその手の主と目が合った。


ゴクッとかたずを飲んで、見つめる目。




「ゴメン。いらない」


うわ、あっぶねー。


めんどくさいことになるとこだった。


『1人だけズル~い、わたしのも受け取って』なんて騒がれたりしたら、マジで暴言吐いちまうからな俺。




「加島さん、彼女とかいるんですか?」


歩き出した背中に言葉が投げられる。


「えっ、ああ、……いるよ」


少し振り向きながらそう答えた。


いつもなら何か問いかけられても返事なんかはしないんだけど。




「「えええっ?」」


訊いた本人だけじゃなく、そこらじゅうから声があがった。




そっか、これを言ったらもうつきまとわれないのか?


なんだ、早く言えばよかった。


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