キミの風を感じて
「なんか今、走るのが楽しいです」
「答えを見つけたってわけか」
「あー、えっと」
言葉にするのはためらわれたけど、でもちゃんと伝えようと思っていた。
「俺、上を目指します」
「……そっか」
「はい」
「外へ出るならシーズンオフの今だな」
強豪校への転校の話だ。
「いえ、それはまだ決めていません。ただ……俺がいなくなれば陸部の顧問は吉崎先生の続投ということで固まりますか?」
それを訊きたかった。
招致するというコーチは、俺がいなければこの学校に赴任しては来ないのだろうか?
今まで通りの陸上部でいられるのか……?
「ああ、加島はその件についてはもう考えなくていいよ。いろいろ言っちまって悪かったな。
お前は一番必要な結果を出してくれたから、あとはそれをたてに俺が学校側にかけあうさ」
「はい……」