キミの風を感じて
「お前が残ろうが出て行こうが、陸部の顧問は吉崎先生だ。だから加島は気にせずに、さらに上を目指すことだけを考えてろ」
「はい」
そういう福本さんだってもうじき卒業で、ホント言うともう関係ないはずなのに。
俺らの代に新キャプテンだって始動しているっていうのにな。
だけどこの人はいつまでもみんなのキャプテンで、最後まで部や部員たちのことを考えてくれている。
ずっとずっと自分のことにだけ必死で、
他の部員のことなんて興味すらなかった俺とは全然違う。
「加島、冬休みに陸連の強化合宿に参加するんだろ?」
「あ、はい」
グランドの端にある部室の入口の前で、福本さんはもう一度俺を振り返った。
「それを体験してから結論を出せばいい」
そう笑ってうなずいた先輩の力強い笑顔に、いつか自分も近づけるんだろうか。
なんて思った。