キミの風を感じて
他愛のない会話がなんでこんなに楽しいんだろ。
家の前に着いたけど中へは入らずに、彼女の話す声をしばらくそのまま聞いていた。
『もう家?』
可愛い声が訊く。
『うん』
『そっか……』
『じゃあまたな』
そう言って電話を切ろうとしたとき、彼女があわてて言葉をつないだ。
『あ、あのっ、冬休みは遊べる? クリスマスとか……。あの、12月28日にライブがあるんだけど、か、加島くん一緒に行かない?』
『ずいぶんいっぺんに訊くんだな』
『あ、へへ、ゴメン。……加島くんイヤかと思って、なかなか訊けなかった』
なんて声が小さくなっていく。
『遠慮してんの?』
意外だったのでそう訊くと、
『だって加島くん忙しそうだし』
と、もっと小さな声が返ってきた。