キミの風を感じて
「あ」
思わず声を発したのは、自分の机の上の片隅に、小さなしずくを発見したからだ。
さっきまでそこに立っていた立木さんからこぼれ落ちた涙の粒だ。
うわ……。
悲しげなあの子の顔が目に浮かぶ。
唇をキュッと結んで、泣くもんかって顔をしていた。
だけど声なんかもう涙声で……。
あの場合、俺はなんて言えばよかったんだろう?
窓から射す柔らかな陽を映して、涙の粒がキラリと光る。
何か神聖なものを見るように、そのしずくを眺めていると、バン!と突然誰かが俺の机を叩いた。
立木さんの涙が落ちていた場所に、でっかい手が乗っかっている。
「あっ、てめー、何すんだよ」
思わず立ちあがって毛むくじゃらの手首をつかむと、大男の鈴木が「あー?」と低い声を出した。