キミの風を感じて

「ではプリンスの集結を祝して、かんぱーい!」


宮本が高らかに音頭をとった。


「ブ、そこは『加島の新記録に乾杯』やろ」と斉木。


「いーのいーの」




3人でグビグビと水を飲むと、斉木がニッと笑ってこっちを向いた。


「悪いけど、お前の記録は、俺が破らせてもらうで」


シレッと言う。




「いやいや、俺だ。俺が破るっ!」


宮本も負けずに鼻をふくらませる。




「自分で更新するからお前らはいいよ。黙って見とけ」


俺も言ってやった。




たった1回同じ番組で取り上げられたってだけなのに、お互いに少し特別な存在になっていて、


それが妙に心地よかった。


気負っていたのが軽くなっていく。





人懐っこい宮本はそれから毎晩部屋に遊びに来ては斉木に迷惑がられていたけれど、それはそれで楽しかった。




そうして俺らは毎晩いろんな話をしたんだ。


陸上の話とか、女の子のこととか……。



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