キミの風を感じて
「でな、自分としては最大限に努力したつもりやのに、こんなにも振り回された挙げ句『わたしと陸上とどっちが大事なん?』って泣かれてフラれるんがオチやで」
「それはお前が『陸上が大事や~』って言うからだろ?」と宮本が笑う。
「ちゃんとお前が大事って言うてるわ」
斉木がモソッと答えた。
「そーゆーのわかってくれる子もいるんじゃねーの?」と俺。
立木さんの顔が浮かんでいた。
「おらんおらん。そんなん幻想や。ガマンはガマンやで、加島。一生懸命ガマンしてくれてるだけや。
そのうち『淋しさを埋めてくれる人が現れたからゴメンなさい』とか言われてフラれるねん」
「斉木先生~。お前どんだけつらい恋をしてきたんだよ」
宮本がからかいだす。
「ほっとけ。俺はもう女はいらん。ただ自由に陸上に没頭していたいだけ」
「はいはい」