キミの風を感じて
机の上の涙はもうあとかたもなく消えていて、つかんだ手首をひっくり返すと、鈴木の分厚い手のひらはすっかり水分を吸収しちまっている。
「お前、手、乾燥しすぎなんだよ」
「はぁ? 何が」
「別に」
ポイッと手首を投げ捨てて、また席に着いた。
返せ、立木さんの涙!
にらむように鈴木を見あげると、やつはそんなことにはお構いなしに本題を切り出した。
「リレーの話だ」
だろーね。
「あの女はないだろ」
と鈴木は言った。
鈴木貴将。男子バスケ部のキャプテン。
いかつい顔に、長身でがっしりと筋肉質な体格。
闘争本能丸出しで、やたら押しが強くて吠えまくるゴリラのような男だ。
かなりめんどくせー。