キミの風を感じて
ライブに行く前、この前録画した加島くんの映像を見ていた。
もう何度繰り返して見たっけかな。
グランドを走る加島くんの姿が遠くから、徐々に大きく映し出されていく。
正確に繰り出される長い足
その一歩一歩が力強く地面をとらえる。
『目がいいですねー』
とアナウンサーが言った。
うん。いい!
涼やかだけど勝気そうな黒い目が、真っ直ぐに前を見つめている。
ゴールの先に見えるのは、まだ続くグランド?
校舎? それとも空かな?
その景色は加島くんだけのもの。
走る加島くんの目の中にわたしが映ることはない。
だけど彼にはいつも真っ直ぐにその景色を見ていてほしいんだ。
ひたむきな加島くんの目が、わたしをそんな気持ちにさせる。