キミの風を感じて

「本番までまだだいぶ時間があるから、なんか軽く食っとこうってなってさ、紗百、買い出しつきあってよ」


「うん、いーよ」


振り向くとステージの隅で坂田くんとユメちゃんがしゃべってるのが見えた。いつも仲いいなぁ。



「『今夜はお前のために歌うよ』とか言ってんだぜ。キモイやつだな」


高梨くんが笑う。


「あはは、高梨くんは言わないの? そーゆーこと」


「……たまに言う」


「ふーん、いいね」


わたしがそう言ったら「ふーん、いいね」って口真似をされた。




「何それ?」


「なんか適当な返事だなーと思って。紗百の眼中には、もう俺はいないのかな?」


「へ……?」




なんでそんなこと言うの? フラれたのはわたしだよ。


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