キミの風を感じて
「高梨くんの眼中に、わたしがいなかったんでしょ?」
軽くたしなめるように訂正しておく。
並んで歩くと高梨くんはやっぱりすごーく背が高くて、その横顔をそっと見あげたら彼は優しい目をしてこっちを向いた。
「それは昔の話。もういなくないから」
それから急に腰をかがめて、わたしの顔をのぞき込む。
「中に映ってんでしょ? 紗百の顔」
「う……ん」
茶色っぽいきれいな瞳の中に、自分の顔がキョトンと映っている。
顔が近くなって、なんか、ドキンとした。
すぐに背を伸ばして、また歩き出した高梨くんが、前を向いたまま言った。
「もう一度、紗百のチョコが欲しいんだ」
「チョコ?」
「バレンタインに、本命のやつ」
「え……」
どちらからともなく足を止めたのは、ちょうどそのとき目的のコンビニの前に着いたから? かな?