キミの風を感じて


「あの……」


「今度はちゃんと受け取るから」


振り向いて真っ直ぐにわたしの目を見つめると、高梨くんはそう言い残して先に店の中へと入って行った。




こ、これって、告白……?


いや、まさか、そんなはずがない。


一回フラれてるんだし、モテ男の彼がわたしなんぞにそんなことを言うわけがない。


からかわれたのか? いや、でも……。




遅れて店内に入り、買い物をする高梨くんの様子をチラチラとうかがう。


彼は何事もなかったようにパンをカゴの中へ、無造作にポンポコ放り込んでいた。




店を出て歩きだした彼に、思いきって切りだしてみる。


「あ、あの、つきあってる人がいるんだ、わたし」


「え?」


「だから、本命のチョコはもうあげられないの」


勘違いだったらただの打ち明け話のノリで行こうと考えてたのに、焦ってガチで断ってしまった。


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