キミの風を感じて

高梨くんは足を止め、静かにわたしを見おろした。


半開きの口がゆっくりと動き出す。




「それって、もしかして……加島晴人?」


「あ、うん」


フルネームで当てられたから驚いた。




「やっぱ、そっか。なんかそんな気がしてたんだよなぁ」


ひとり言みたいにそうつぶやくと、高梨くんは無造作に髪をかき上げ頭をかいた。




「だけどまさか、もうつきあってるとは思わなかった」


「ゴメンなさい」


少しかしこまって頭を下げる。




それでも高梨くんは、変わらない優しい笑顔を向けてくれたんだ。




「何? みんなには内緒でつきあってんの?」


「う? 加島くん騒がれるの苦手かなと思って。ほら、ペースを乱されてタイムとかに影響あるとイヤだし」




モソモソと説明するわたしを、高梨くんはジッと見つめていた。


< 280 / 375 >

この作品をシェア

pagetop