キミの風を感じて
高梨くんは足を止め、静かにわたしを見おろした。
半開きの口がゆっくりと動き出す。
「それって、もしかして……加島晴人?」
「あ、うん」
フルネームで当てられたから驚いた。
「やっぱ、そっか。なんかそんな気がしてたんだよなぁ」
ひとり言みたいにそうつぶやくと、高梨くんは無造作に髪をかき上げ頭をかいた。
「だけどまさか、もうつきあってるとは思わなかった」
「ゴメンなさい」
少しかしこまって頭を下げる。
それでも高梨くんは、変わらない優しい笑顔を向けてくれたんだ。
「何? みんなには内緒でつきあってんの?」
「う? 加島くん騒がれるの苦手かなと思って。ほら、ペースを乱されてタイムとかに影響あるとイヤだし」
モソモソと説明するわたしを、高梨くんはジッと見つめていた。