キミの風を感じて

「俺、今夜のライブを紗百に捧げる」


「え?」


「全身全霊、紗百のためにギターを弾くから」


「高梨くん」




「だから一応さー、それを見てから断ってくれる?」


最後はちょっと冗談っぽくそう言って、高梨くんは笑った。




それからわたしの頭をコツンとやると、彼はまた歩き出したんだ。




  * * *




そうして始まったドリアンチョッパーのライブは、すごい熱気だった。



地下にある小さなホールにいっぱいになった観客のほとんどは同じ学校の生徒で、知ってる顔がいっぱいいたけれど、どの顔もみんな生き生きと輝いて見えた。




変わる照明の色にきらめく汗。

目にもとまらぬ速さでギターをかき鳴らす指。

あおる旋律。

坂田くんのシャウト。



ステージと客席がひとつになって、大きなパワーが生み出される。


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