キミの風を感じて
初めての単独ライブが大成功をおさめ、明るいムードでいっぱいの中、お客さんがはけていくのを見送っていた。
知り合いのライブハウスということもあって、このまま仲間うちだけで打ち上げパーティとなるらしい。
「紗百も加島と一緒に参加な」
坂田くんが参加人数に入れてくれたけれど、当の本人がまだ来ていない。
連絡をしてみようとケータイを取り出したとき、「紗百、ちょっといいか?」と声がかかった。
高梨くんが、ステージ脇の出入口を目で指している。
彼のあとをついて部屋を出て、通路の奥に2人で向かい合った。
「どうだった? ライブ」
「すっごく熱かったぁ! みんなまたうまくなったよね」
興奮冷めやらぬまま、そう答えると、高梨くんはうれしそうにうなずいた。