キミの風を感じて
「どう? ダメかな俺」
高梨くんの声のトーンが変わる。告白の件だ。
「ゴメンね、わたしやっぱり……」
「加島?」
コクンとうなずく。
「あーあ、やっぱプリンスにはかなわねーのか。一応こっちも世界目指してんだけどね」
柔らかい話し方だった。
「ゴメン」
ペコンと頭を下げる。
「気にすんな。紗百にチョコもらったときに軽く流しちまったのは俺なんだから」
何を言ったらいいのかわからなかった。
「あのね、高梨くん前に『手ぶらでいるのもいいもんだ』って教えてくれたでしょ? あの言葉に今でも助けられてるよ」
「ああ……」
茶色い目が少しだけ笑った。
「なぁ紗百、お前の気持ちはわかったけどさ、ライブがんばったごほうびに1分間だけ俺にくれる?」
「え、いいけど」