キミの風を感じて
「あっ、加島くん」
たぶん合宿先からそのまま来てくれたんだと思う。
ダウンジャケットにデニムとスニーカーといういでたちの彼は、大きめのスポーツバッグを肩からさげていた。
「…………」
「ライブね、さっき終わっちゃったの。でも打ち上げやるみたいだから。加島くんも一緒にって言われてる。何か食べるものも出ると思うし」
「……何?」
「え? 唐揚げとかフライドポテトとかだと思うけど、加島くんおなかすいてる? 2人で何か食べに行く?」
高梨くんにも悪いし、そのほうがいいかもしれない。
「……じゃなくて、今の何?」
「え?」
「高梨と抱き合ってた」
そう言った加島くんの声は低くこわばっていた。
いつもぶっきらぼうな言い方をする彼だけど、そうじゃなくて、そういうんじゃなくて、怒りを押し殺したような……そんな雰囲気だった。
さっきのハグ見られちゃったんだ。