キミの風を感じて
「ち、ちがうの。あれは……えっと、なんでもないよ」
「何焦ってんの?」
黒い瞳が突き刺すようにわたしを見る。
加島くんが怒ってる。
それだけでバクバクと動悸がしてきた。
ど、どうしよう。
ちゃんと説明しなくちゃ。
「ちがうの。そういうんじゃないの」
「じゃ、何?」
「えっと、ラ、ライブがんばったごほうびっていうか……」
「は?」
ちがうか、えっと……告白されたって言ったほうがいいんだろうか?
それとも高梨くんは誰とでもあんな感じだって言う? ライブの後で興奮してたって。
本当のことを話したほうが誤解されちゃう気がして一瞬とまどう。
「あれ? 紗百ちゃん、もう打ち上げ始まってるよ~。早く早く!」
ちょうどそのときホールの方から出てきた女の子に声をかけられた。
確かドラムの子の彼女だ。前に一度一緒にカラオケに行ったことがある。