キミの風を感じて

「高梨くんがお待ちかねだよ~」


なんて、なぜか冷やかされた。




「た、高梨くんとはそういう関係じゃないしっ」


思わず大声で否定すると、彼女は「ウソだぁ」と意味深に笑う。


「だって高梨くん、バラードのときなんか紗百ちゃんのこと見つめっぱなしで弾いてたじゃん。こっちまでドキドキしちゃった」




そこでやっと加島くんに気づいたのか、その子は「お、プリンスだ」と低くつぶやき、「知り合い?」とわたしに訊いた。


「うん。同じクラスなの」


即答した返事を聞くか聞かないかで彼女はトイレのほうへと走っていった。





「へー、言わないんだ? 俺たちがつきあってること」


加島くんがちょっと引っかかる言い方をする。




「それはっ、加島くんがそうしようって」


「隠そうだなんて言ってないよ、俺は別に」


「だってわざわざ公表することないって言ったでしょ? マスコミの人にも『彼女なんかいません』って言うから、バレたらダメなのかと思って……。

ホントはわたしのほうがみんなに話したかったんだよ?」


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