キミの風を感じて

「た、高梨くんとはホントになんでもなくて、告白されたけど、ちゃんと断ったから」


泣きそうになるのを必死でこらえてそう言った。


やっぱりホントのこと話したほうがいいよね。




「それがなんで抱き合ってんの?」


加島くんの表情は冷ややかなまま変わらない。


「抱き合ってたんじゃなくて、あれは高梨くんが急に……」


「立木さんだってイヤがってるようには見えなかったけど、全然」




だってイヤじゃなかったもん。とは言えなかった。



高梨くんは優しくて、

わたしが断っても怒らないで笑いかけてくれて、

こんなふうに責めたてたりしなかったもん。


だから抱きしめられても全然イヤじゃなかった。



だけどそれは、加島くんを思う気持ちとは次元がちがうってこと、どう説明したら信じてもらえるのかわからない。


黙ってうつむいて考えていると、加島くんが小さく息をつくのが聞こえた。


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