キミの風を感じて
「……ゴメン。ムリだ、俺」
ユメちゃんの腕の中で固まっていると、しばらくして、ボソッと一言だけそう聞こえた。
加島くんが帰っていくのが気配でわかる。
せまい通路をそのまま行くと、地上にでる階段へとつながっている。
だけど――
ユメちゃんの腕の中から飛び出して、加島くんに追いすがり、今の言葉の意味を質す勇気は、もうわたしには残っていなかった。
「今夜はイヤなこと忘れて、パァッと騒ごっ!」
ユメちゃんはそう誘ってくれたけど、もうそういう気分では全然なくて、
お祝いムードのみんなにも悪いし、わたしはひとりライブハウスをあとにした。