キミの風を感じて
会場に電気がともり、客が引いていく。
立木さんをつかまえようとステージのほうへ歩き出したんだけど、退場する人の波に押されて逆行できない。
「しゃーねーなぁ。あとで拾うか」
いったん流れに身をまかせて外に出て、階段をあがったところで彼女が出てくるのを待ち構えていたんだ。
だけど、人がまばらになっても立木さんは出て来ない。
結局俺はもう一度階段を下りて、あの子を探しに行ったんだ。
夢崎さんが坂田の彼女だから、一緒に残ってしゃべっているのかもしれない。
ホールの中をのぞいてみたけど立木さんはいなくて、キョロキョロしながら脇の通路を奥へと歩いていった。
通路の奥は両脇に機材が立てかけてあり、手前からだと見通しが悪い。
だけどチラッと人影が動くのが見えた。