キミの風を感じて
「ハン、どうだか…!」
鈴木はジロリと俺をにらむ。
「そりゃお前が100mで日本新に迫るタイムを叩きだしたのは知ってるぜ。だけどそれ、去年の話だろ?」
「ああ」
「お前あれ以来フォーム崩して全然ダメらしいな。自分の記録をずっと更新できずにいるんだろ? てことは、そもそもその記録自体がマグレだったって話じゃねーの」
わざわざ聞こえよがしにでかい声で言うと、鈴木は勝ち誇ったようにニヤッと笑った。
知ってんだぞ俺、みたいな感じで。
「そーかもな」
平然とそう答えたら、「てめぇっ」と鈴木は怒りだした。
「そんなんで『巻き返す』とか言うな!」
「そのつもりで走るけど」
「つもり? 遊びじゃねーんだぞ。でかいクチ叩くな、バカ!」
はぁ…、運動会なんてどっちかっつーと“遊び”よりだろーが。