キミの風を感じて

頭に血がのぼって、夢崎さんにひっぱたかれるまで自分が何を言ったのか、よく思い出せない。


だけど相当ひどい言葉をあの子に浴びせたんだと思う。




大きく見開かれた瞳から、涙がはらはらといつまでも流れ落ちていた。

唇を押さえる指先が、微かに震えていた。




泣かせてしまったのはこれで何回目だっけ?




俺が怒鳴ったとき、あの子の肩がビクッと震えたことだけは、はっきりと覚えている。



きっと、怖かったよな?






家に帰って、風呂に入って、ベッドに寝転んだ。


大の字になって天井を見あげる。


頭ん中が真っ白だった。




ゴメン、ムリだ、俺……。




つきあってるとは言えないようなつきあい方だったけれど


あの子のことをあきらめるなんてムリだ。


忘れるなんてムリだ…。




終わってしまうなんてムリだ……。


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