キミの風を感じて
望んではいけないことを望んでたんだ……。
ライブハウスからの帰り、ひとり夜道を歩きながら、ずっとそのことを考えていた。
もう涙は乾いていて
しんと静まった夜空には、三ツ星がキラキラと光っていた。
強化合宿に参加していた他の人たちは、みんな男女交際を禁止されてるんだって。
振り回されて陸上に専念できなくなるからって……。
『こーゆーことだよな』と加島くんは言った。
みなぎっていたヤル気が、わたしのせいでゼロになっちゃったんだって。
わたしは、自分が加島くんのジャマをしているなんて知らなかったよ。
加島くんの大切な景色を壊してしまう側の存在だったなんて知らなかったよ。
加島くんの心の隅っこに、そういう思いが隠れていたことなんて――
全然知らなかったんだよ……。