キミの風を感じて

そんな思いをしながら、加島くんはライブ会場に駆けつけてくれたんだね。


疲れているのに、やっぱりムリをさせちゃっていた……。


そうして――


せっかく会えたのにケンカしただけで終わっちゃった。




もっと話したかったな。


加島くんの話をいっぱいいっぱい聞きたかった。


ライブで一緒にリズムに乗ったり、手をつないで帰ったりしたかった。




だけど……わたしがそう望むことが、加島くんの足を引っぱってしまうの――?






彼は普通の高校生とはちがうもん。


日本一の記録を持っていて、


でも、もっともっと速く走りたくて


ずっとずっと努力を続けている人だ――。




心の中に静かに燃える夢を持っていて、
それをつかもうと真っ直ぐに手を伸ばしている。


手にした夢は、また新たな夢を生んで、
加島くんの前には、果てしない未来が広がっているんだ。


そして背後からは、彼を追うランナーたちが迫り来る。




そんな世界に生きている人だ――。


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