キミの風を感じて

翌日からは授業も始まり、もうみんなすっかり本来のペースを取り戻している。


わたしだけが置いてきぼりか……。




休み時間の加島くんは、大好きな陸上雑誌も見ずに机に突っ伏して過ごすことが多くなった。


練習ハードなのかな? 疲れてるのかもしれない。


そんな彼の姿をどうしても目で追ってしまい、目が合って、あわてて自分からそむける、なんてことを繰り返していた。


きっと、すごく感じ悪いよね……。






新学期が始まって3日目の放課後――。


「ねぇ紗百、前みたいに化学室の廊下の窓から、ちょっとグランドをのぞいてから帰ろうか?」


急にユメちゃんにそう誘われた。


え?


ユメちゃんはわたしの返事も待たずに歩きだす。




「あの……?」


「いーから、いーから」




ユメちゃんには、加島くんと別れたことは、もうとっくに報告してある。


あのままメールだけで終わらせてしまったことも、


彼からの反論は特になかったことも……。


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