キミの風を感じて
いつもの窓辺に立ち、部活中の加島くんを目で追った。
ここからなら目が合うことはないし思いっきり見ていられる。
やっぱ、走っている加島くんはいいな。
他の何からも解放されて、
ただ前だけを向いている感じがする。
「まだ好きなんでしょ? 加島くんのこと」
並んでグランドを見ながら、ユメちゃんがそう訊いてきた。
「すぐには……ムリだけど、でも忘れるつもりだよ」
いびつな笑顔を作って自分に言い聞かせるように答えた。
「忘れらんないよ、紗百は。
彼の陸上のために別れるつもり? 加島くんに言われたことを気にしてるんでしょ」
女の子とつきあうと陸上に専念できなくなるってライブの晩に加島くんから言われた言葉を、ユメちゃんもしっかり覚えていて、で、すごく怒ってくれていた。