キミの風を感じて
確かに……
加島くんのために別れようだなんて、ただの独りよがりなのかもしれない。
だけど坂田くんとちがって、加島くんは別れることにすんなり同意したもん。
きっとホッとしてるんじゃないのかな。
今さらもう一度話し合いたいなんて、ちょっと言えそうになくて……。
グランドに目をやると、加島くんがトラックを全速力で走るのが見えた。
もう2周ぐらい走ってる。
それからゆっくりと立ち止まり、前かがみになって太ももに手を置き、肩で息をしている。
腕でグイッと額の汗を拭い、彼はまた真っ直ぐに前を見据えて走り出した。
かなりキツそう……。
だけどわたしには、加島くんのいるその場所だけが、光が射して輝いて見えるよ。
そんな彼をグランドの外から遠巻きに見ているファンの子たちはやっぱ健在で、中には歩きながらケータイで写真を撮ってく男子とかもいた。
ひとりのランナーとしても憧れられているんだ。
そんな道を加島くんはもう歩き始めている。
もう
わたしの手には届かない人なのかもしれない――。