キミの風を感じて

加島くんの腕の中はあったかくて……、


ずっとずっと抑えていた気持ちで胸がいっぱいになる。




好きだよ、加島くん……。


気持ちを抑えていると、苦しくて苦しくて、自分が自分じゃないみたいなんだよ。




「俺……」




彼が何か言いかけたとき、突然階下から女の子たちの声が響いてきた。




「ヤッベー! もう授業始まってるって」
「急げ、急げ」


バタバタとすぐ下の階から足音があがってくるのがわかる。




その音に、加島くんはスッと腕の力を抜いて、わたしを解放した。


イタタ……。髪の毛はまだ絡まったまま。




すると加島くんはわたしの髪ではなく、学生服から自分のボタンをブチッと引きちぎった。


絡まっていた髪が、途端にフワッと自由になる。




コロン……。


そのボタンをわたしの手のひらに落として、彼は1段だけ階段をのぼった。


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