キミの風を感じて
机に置いた手のひらの上で、金色のボタンをそっと転がしてみる。
さっき、わたしは何を話せばよかったんだろう?
まずは高梨くんとのことは誤解だってわかってもらって……
それから?
加島くんのことがすごく好きですって、伝えるの?
加島くんの夢をジャマしたくないよって、伝えるの?
もしさっき、その両方を伝えることができていたら、
別れなくてもやっていける道を、わたしたちは選択することができたんだろうか。
加島くんは、それを望んでくれただろうか……。
「どーしたの? そのボタン」
となりの席からユメちゃんが目ざとく発見して、ひそひそ声で訊いてきた。
「加島くんに……もらった」
「へぇー、なんか卒業式みたいだね」
何気ない言葉だったと思う。
だけどその響きが、妙に心に引っかかった。