キミの風を感じて
数学の教務室の前に着き、ガラッと力任せに戸を開ける。
「え、立木さん?」
ちょうど真正面の机に顧問の先生と向き合って座っていた加島くんが、驚いて振り向いた。
「か、加島くん、転校なんてしないよね……?」
立ちあがった彼に言葉を投げる。
「えっ、なんで知ってんの?」
加島くんはビックリして固まった。
「転校の話……してたの?」
「え、うん」
戸惑ったように黒い瞳が揺れる。
「イ……ヤだよ」
そんなのナシだよ。
加島くん、わたしはまだ何も伝えてない……!
このまま離れてしまうなんてイヤだよ。
目の前まで来てくれた彼の腕を、ギュッとつかんで揺さぶった。
声が震える。
加島くんがいなくなってしまう。