キミの風を感じて
「好きなの……。高梨くんじゃないよ。わたし、加島くんのことが好き……!」
やっと言えた言葉に、涙がボロボロとこぼれた。
「リレーの練習をみてもらうようになってから、加島くんのこと、いっぱい知って、どんどん惹かれていって……、だから告白されたとき、すっごくうれしかったよ」
グシグシッと手の甲で涙を拭った。
「だけどこの前ケンカしちゃって、他の強化選手たちが男女交際を禁止されてるって聞いて、加島くんもそのほうがいいのかなって思ったの」
「え」
戸惑った視線が、わたしに注がれる。
「わたしがガマンすればいいんだって思った。加島くんのジャマになるぐらいなら、彼女でいるのやめようと思った。
加島くんの景色を壊したくはなかったの」
「景色……?」
「走ってるときに加島くんが見る景色だよ。
空? グランド? いつも真っ直ぐに見ているでしょ?」
「俺?」
「うん」
グランドを走る加島くんの雄姿が浮かんだ。