キミの風を感じて
「そんなふうに……真っ直ぐな目をして走る加島くんが好きなの。わたしは見ることができないけれど、加島くんにはずっとその景色を見て走り続けてほしい。
そんな加島くんを見ていたいよ。それだけで、わたしはうれしいから」
「待てよ。だから別れることに……したの? 俺のジャマをしないために? 他の学校のやつらの話、俺がしたから?」
加島くんの声が早口で訊いた。
彼の顔が紅潮して、目が真っ直ぐにわたしを見るから、怒られてるみたいで声が小さくなった。
「わたし、やっぱり振り回しちゃいそうだし……加島くんが陸上に集中できなくなったら困るもん」
うなずくわたしに、彼が絶句する。
「なのに……。加島くんが転校しちゃったら……もうそれすらできなくなる。加島くんが走る姿、見られなくなっちゃう……」
悲しくて悲しくて、また涙があふれてきた。