キミの風を感じて
「…………」
言葉を失って、呆然と立ち尽くす加島くんの頭を、誰かが不意にポコンと叩いた。
忘れてた。陸上部顧問の吉崎って先生もいたんだった。
「加島、お前なぁ、ぼんやりしてる場合かよ」
先生はいつのまにか、わたしたちのいる入口のところまで来ていて、加島くんにそう言った。
「さっさと否定しろって」
「え、何を?」
「バカ。お前、転校すんの?」
「や、しません」
と加島くんが答える。
は?
えっ?
「し、しないの?」
「ゴメンね彼女。加島のコミュニケーション能力の低さは、常人では計り知れないレベルなんだ」
と吉崎先生が苦笑した。
「加島の言う『転校の話』っていうのは、転校する話じゃなくて、転校しないって話なんだ」
「は?」