キミの風を感じて
「だけど俺、やっぱりここにいたいから……。
だから先生に相談に来ました。新しいコーチが来たとしても、吉崎先生も顧問を続けていただく訳にはいきませんか? お願いします」
加島くんが先生に頭を下げた。
そういう話をしに来たんだ……。
「うん、続けるよ」
なのに先生はいともあっさりとそう答えた。
「来年からはお前を目指して地元の足の速いやつらがたくさん入学してくると踏んでいる。部員が増えるから顧問も副顧問も1人ずつ増員だ」
「え、そうなんですか?」
「それに新しい指導者は俺が上に頼んで引っぱってきてもらったんだからな。上級者にも的確なアドバイスができるように」
先生はちょっと誇らしげな顔をする。
「だからお前はここにいろ。いい学校はたくさんあるかもしれないけれど、あと1年、わざわざ環境を変えて賭けに出る必要はないよ」
人見知りのくせに、と先生が笑った。