キミの風を感じて
そうして少し真面目な面持ちに戻って、吉崎先生はこう続ける。
「お前が1年のときつぶれかけたのは、俺のせいだ、加島。
俺がお前を守ってやれなかった。
俺だって、もう二度とあんな思いはしたくないよ。これでもちょっとは学習したんだぜ」
そうだ……。
加島くんが新記録を樹立してすぐに陸上部の練習場所が変わって、外部の人の目や声にさらされなくなったっけ。
マスコミの取材も限定されているみたいだし、経験豊富なコーチも赴任してくるという。
それらは全部この先生が手配したことなんだ。
「口下手なお前のことだから、その新しい先生とうまくやってけるのかはビミョーだしな。俺も残ってちゃんと見守ってやるよ」
「……はい。
よろしく、お願いします……!」
いつも冷静なはずなのに
一瞬詰まった加島くんの声に、
何だかこっちまでジーンとしていた。