キミの風を感じて

「けど、そんな指導者を引っぱってくるなんて、よく上を納得させただろ?」


先生が得意げに言った。


「はぁ、そう言われればそうですね」


「少子化の時代だから公立高校も生き残りをかけていろいろ大変なんだ。

加島に便乗してうちは陸上部を強くし、それを売りにしましょう、なんて教頭をそそのかしたんだぜ」


「ハハッ、やり手ですね」


子どもみたいに笑った加島くんを見て、先生も満足そうに微笑む。




それから先生は少し声をひそめてこう言った。


「加島には、他にも転校したくない大事な理由があるみたいだし、な。

まー、終わったら鍵閉めて職員室に持って来てよ」


そう言いながら加島くんの手に、この部屋の鍵をすべらせ、吉崎先生は教務室を出ていった。




わたしが守りたかった加島くんのことを、ちゃんとした大人の立場でしっかり守ってくれている人がいるんだ。


それがわかって本当に本当にうれしかった。



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