キミの風を感じて
逆に、立木さんが昔高梨のことを好きだったってことは小耳に挟んで知っていて……
だからあのライブの日、高梨に抱かれてうなずいている君を見たとき、あーもうダメだなと思ってしまった。終わったなって……。
あいつイケメンだし、立木さんの中では俺とつきあってること自体、ただ順番が狂っちゃっただけなんだって思った」
「そんな……」
「だから、君があいつを選んだなら、俺は潔く身を引こうと思ったんだ。
俺が自分の気持ちをぶつけても、君を困らせるだけだから……。
彼氏らしいことを何にもしてやれなかった俺が、最後に君にしてあげられるのは、それぐらいのもんだと思った」
クルッと加島くんは椅子ごとこっちを向き、それからわたしの回転椅子をクイッと回して自分のほうに向けた。
ひざが触れるほど、まともに加島くんと向き合う。