キミの風を感じて
「紗百、俺、」
だけど黒く強い光は、真っ直ぐにわたしをとらえたまま動かなかった。
「君がいないと走れない」
日本一足の速い高校生
“100のプリンス”加島晴人は
わたしなんぞにそんな言葉を、とても真剣にささやいた。
「そんなはず……」
「あるよ」
強気な瞳に、優しく切ない色が差す。
そんな目で見つめられたら
ジーンとして
胸がキュウッとして
もう何も言えなくなる……。
返事をするより先に涙がじわっと込みあげてきて、
夢中でコクコクうなずいた。