キミの風を感じて
「ちょっと紗百借りていい?」
夢崎さんに断ってから、紗百の手を取りグランドへと向かう。
直線コースの100m。
ゴール地点に彼女を立たせた。
「加島くん、いったいなんなの? メチャクチャ目立っちゃってるよ」
そういえばさっきから、紗百の手を引いて歩いてるとやたら声をかけられた。
『エーッ、お前らそーゆー関係?』って
、
クラスメイトに訊かれたから、俺が黙ってうなずくと、わーわー騒ぎだしたりして……。
中には半泣きになってる女子もいたけど、ほとんどが笑顔で祝福してくれた。
つーか、かなり冷やかされた。
わけもわからず俺に引っぱられて歩く紗百は、『なんなの?』『どーしたの?』って、さっきからそればっかり。
「つきあってるってバレちゃったし、誰かに嫌がらせされたら言えよ」
心配になってそう言うと、キョトンと俺を見あげた紗百は、コクンと力強くうなずいた。