キミの風を感じて

「立木さん!」


終礼が終わって教室を出ようとしたとき、不意に声をかけられた。


振り向くとクラスメイトの本荘さんが立っている。


クラス対抗リレーの出場者欄に名前のあった人だ。




「リレー引き受けてくれたんだって?」




小麦色の肌に白い歯。


長身で、男の子みたいに凛とした顔立ちが、笑うととたんにあどけない。


う……。




あんまりしゃべったことのない相手だけど、わたしは本荘さんのブレザーの端っこをつまんで、廊下の隅に引っぱって行った。


教室の入口付近は人が混雑していてゆっくり話せそうになかったから。




廊下に射す陽の光に、本荘さんのショートカットの髪が茶色く透ける。


ソフトボール部の次期キャプテン。


飾らない少年っぽい雰囲気は、後輩女子にモテモテなのがよくわかる。




わたしとは全然違う世界の人だ。


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