キミの風を感じて

あ。


加島くんも走ってる。




全力ではなく、軽く流しているだけみたい。
なのにスイスイときれいに無駄なく手足が動く。


ふーん……。




「まぁ陸部なんだから、できて当たり前だけどさ」


ボソッと思わず憎まれ口が出た。


そんなわたしを横目にユメちゃんが訊く。


「ねー紗百、明日どーすんの? 朝練行くの?」


「う」




行くもんかって思ってたけど、さっきの本荘さんたちの顔が頭をよぎる。


笑顔で誘ってくれたのが、すごくうれしかった。


知らないうちにリレーに出ることになっちゃっていて
だけどそれを誰も教えてはくれなくて

そのうえ代わってもくれなくて

なんていうか、かなりヘコんでいただけに、本荘さんたちの思いやりがじんわりと温かく胸に沁みていた。




一番できないわたしが練習に出ないなんて、あり得ないよね……。



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