キミの風を感じて
なぜかドギマギして返事が遅れると、わからないと思ったのか、加島くんはわたしの背後にまわり、両手でわたしの腕をとった。
ひ、ひぇ?
そうなると後ろから抱きかかえられるような体勢になり、心がもっとあわてだす。
「いい? わかりやすく言うと、こうじゃなくて……」
彼はつかんだ腕を左右に振って、乙女走り的わたしの腕の振りを再現した。
「こうするんだ」
今度はわたしの腕を前後に振ってのぞき込む。
「わかる?」
髪に彼の息がかかった。
案外優しい声をしている。
「……わかんない?」
返事のないわたしにもう一度問う声。
振り向くと真っ直ぐな黒い目が少し戸惑ったようにわたしを見ている。
「わ、わかるよ」
あわてて早口でそう答えた。