キミの風を感じて
お、怒っちゃった……よね?
「理屈ばっか意識すると余計走れなくなるし、まずはさっきの手の振り方と足の出し方だけにしとくか」
あっさりとそう言ってくれた。
バカだと思われた……かな?
「ゆっくりでいいから、そこだけ注意しながら走ってみて」
「う、うん」
ここはちゃんと理解していることを示さなくっちゃ。せっかく教えてもらったんだし。
手は前後に力を抜いて振る。
足は大またで前へ前へと踏みだす。
うんうん。
ずいぶん遠いのにトラックの反対側は野球部の練習の領域らしく、もう一度さっきのスタートラインに戻って走り始めた。
手は前後に、足は前へ。
ゆっくりと確認しながら走ってるのにハァハァと息があがる。
ゴールに着いて辺りを見渡したけど、
あれ? 加島くんがいない。