キミの風を感じて

お、怒っちゃった……よね?



「理屈ばっか意識すると余計走れなくなるし、まずはさっきの手の振り方と足の出し方だけにしとくか」


あっさりとそう言ってくれた。


バカだと思われた……かな?




「ゆっくりでいいから、そこだけ注意しながら走ってみて」


「う、うん」


ここはちゃんと理解していることを示さなくっちゃ。せっかく教えてもらったんだし。



手は前後に力を抜いて振る。
足は大またで前へ前へと踏みだす。



うんうん。




ずいぶん遠いのにトラックの反対側は野球部の練習の領域らしく、もう一度さっきのスタートラインに戻って走り始めた。


手は前後に、足は前へ。


ゆっくりと確認しながら走ってるのにハァハァと息があがる。




ゴールに着いて辺りを見渡したけど、


あれ? 加島くんがいない。


< 59 / 375 >

この作品をシェア

pagetop