キミの風を感じて
「さっきちらっと見たんだが、まさか女子と2人で練習してた?」
ニヤニヤしながらそんなことを訊かれた。
「陸上部の子じゃないよな? 彼女か?」
「いや、クラスの女子です。体育祭の練習で」
「へー、めずらしいな。いつもひとりだから」
そーゆーことには関心を示す。
「あの、何か用ですか?」
声をかけてきたんだから、たぶんそうだろう。
「あー、お前、陸連の強化合宿どーすんの? 行く?」
忘れてた。
全国の高校から選抜された陸上強化選手だけで、冬休みに行われる練習合宿の話だ。
「参加の申し込み、明日が締め切りだからさー」と吉崎。
去年は迷った挙句、結局断って逃げちまったんだ。
こっちの顔色をうかがうような目を、真っ直ぐに見返した。
「……行きます」
「お」
吉崎が少し驚いた顔をする。俺が断ると思っていたらしい。