キミの風を感じて
まぁ、ここ一年の公式戦での俺のタイムからすると、そう思うのも無理はない。
参加したって自分がみじめになるだけだからな。
「声かけてもらえただけでも感謝して、行って来ようと思ってます」
改めてそう言うと、顧問はポカンと口を開けた。
「あれ? 加島ってそーゆーキャラ?」
「は?」
「そんな素直で謙虚なやつだっけ?」
そうしてすぐにいつもの大げさな笑顔になった。
「はは、そうしろ、そうしろ。それがいい」
背中をバンバンと叩いてくる。
「俺が教えてやれたらいいんだが、わかんねーしなぁ、日本記録の走り方なんてよー」
公立の普通高校の特に有名でもない運動部。
顧問なんて人のいい教員が若い順に押しつけられるんだろうに。
所属する俺があんな記録を出したばっかりに、陸上経験ゼロの吉崎は、学校や陸上関係のえらい人たちからかなりの圧をかけられてるらしい。